「あれ?人間ってもっと暖かくて、もっと豊かな力が眠っているのかもしれない–」(桃北真有佳 22歳 埼玉)
よく笑い、時に涙し、本当によく食べ、よく探究した4泊5日の合宿コースでした。
3月24日~28日まで鈴鹿市南部に広がる生物多様性地域を舞台に、第1回GEN-Japanガイアユースを開催しました。各地から集まった10人余りの参加者とスタッフ総勢15人で、里山体験と、都市型開放型のエコビレッジとして知られるアズワン鈴鹿コミュニティに触れながら、これからの自分の生き方と新しい社会づくりについて、実践的に探究しました。
お互いにお互いを見ながら、気づき合う姿は本当にすがすがしいものでした。初対面同士で最初は緊張気味だったにもかかわらず、5日間で互いに変化を喜び合えるような、心通うようになっていくプロセスに、自身の可能性や平和への可能性を強く感じたようです。
事前のアンケートに、「幼いころから、どうしたら戦争はなくなるのか、どうしたらみんなが平和に幸せに、豊かに生きられるのか。」「人が人らしく生きることと、地球上のすべての存在と矛盾なく調和していきたいが、どうあったらそうなれるのだろう」等そんな問いがずっと心の片隅にあり、半ばあきらめかけながらも、もしかしたらその可能性があるかもしれないと思って参加した人たちです。
GEN-Japanガイアユース、「世界観・社会・経済・環境という4次元の領域を統合的に学ぶ4次元デザイン教育」と同時に、5日間を通して切れ目なく行われる、「内省による対話・会話と探究」の、2本の柱で、持続可能な社会を実現できる人になるための基礎コースが展開されました。
初めて過ごす時間。言葉を脇において、視線を交わし、小森伸一さん(東京学芸大学教授・ホリスティック教育)と一緒に、体を使って知り合う自己紹介からスタートしました。
世界観
続いて、「ホリスティック」とはどういうことか小森さんからお話を聞いた後、里山に移動。
木立の中を歩きながら、人に触れながら、鳥の目になって世界を俯瞰し、虫の身になって土を感じ、空を見上げました。人の手が程よく入って、手入れされた里山には、食べごろのシイタケもたくさんありました。木の根元や草むらに自分の居場所を見つけて座ってみました。太陽のぬくもり、風に運ばれる雨のにおい、土の湿り気、まだ幼い鶯の鳴き声に思わず笑い声。朝日を見ながら、火を囲んで暖を取る。パンを焼いて頬張りながら、一日が始まり、お風呂に一緒に入って語り合ったり、いろいろな場面で、切れ目なくつながりの中にあり変化していることを感じる時間がたっぷりありました。
こうした自然界の恵みに抱かれ、今、ここにいることができる。普段は忘れている地球や自然のなかに、私たち人間が生き、社会を創って、様々な行為をしていることが浮かび上がりました。ここでどうやって調和して生きていくことができるでしょう—-
社会
本当に一人一人がそれぞれらしく生きられる社会とは、
どんな社会でしょうか。GEN-Japanガイアエデュケーションとガイアユースが、特に力点を置いている領域です。学びの場面だけではなくて、暮らしを含めたプログラム全体を通して、絶えず内省と会話による探究がベースになっています。
何をやっても、温かな心の通い合う人と人の間柄であるかどうかが、生きている足元の社会の質を決定します。
参加したお互いの中で、その原体験をすることが、これからを生きる上で、何よりの財産になっていきます。
特に意識化されにくい、これまでの経験からあたかも実際であるかのように思い込んでいる、人に対しての恐れや不安が、温かい空気を周囲から感じ取ったとたんに、薄れていきます。
あっという間に、自分やお互いの元々の願いに耳を傾け始めていきました。若者たちの生きるエネルギーは、そんな心の壁・バリアーを突き破って、もっと一緒にいたい、座って話したくなったり、あっという間に溶け合いたくなるようです。
- 社会- NVCの基礎講座
パーマカルチャーと平和道場(千葉県いすみ市)から中島美紗子さんを迎えて、非暴力コミュニケーションを学びました。日常で意識しにくい、一人一人の心の領域に関心を向けることを、NVCのアプローチから学びました。
美紗子さんは、スタッフの岡田拓樹君と同じく、GEN-Japanガイアエデュケーションの一期生でもあり、元気に活躍しているのも嬉しい一コマでした。
経済
人を幸せにする経済、自然と調和し人と共に生きていくための経済とはどんな経済でしょうか。
何気ない毎日の暮らしが、知らないうちに、極端な貧富の差の上に成り立っていたり、どん欲さを当前とする人格破壊の引き金となったり、自然環境を壊して生きる基盤を根こそぎ破壊するような気候変動を引き起こすレベルになってきました。ここに至ってようやく現行の経済システムの不安定さ、真理に則さない人間観や世界観の上に組み立てられていることに気づき、見直しが世界各地ではじまっています。人が人らしく、自然界や世界と調和して生きられる、持続可能な経済システムが、地域ごとの循環共生の輪の中で創造されつつあります。
今回は 千葉県いすみ市在住の NPOグリーンズ代表理事 greenz.jp編集長 鈴木菜央さんから、いすみ市での取り組みについておはなしいただきました。特に鈴木さんご自身が、今のような問題意識をもって世界を見つめなおすようになった経過は、20代前半の参加者のみんなとも重なるところも大きく、深く印象に残ったようです。市の行政と組んだりしながら、あるいは市民からの具体的な活動についてお話を聞きました。
いすみローカル起業フォーラムを毎月行っている 。
76年バンコク生まれ東京育ち。ソトコトで編集などを経て2006年にウェブマガジン「greenz.jp」を創刊。千葉県いすみ市在住。
千葉県いすみ市は、都心から一時間少しの距離ですが、豊かな里山・里海に恵まれて、首都圏からの移住者も多いところです。市民の「自然と共生する暮らし」への意識ももともと高いことでも知られていますが、行政の人たちと協力して鈴木さんたちが進める啓発活動で、有機米が学校給食で使われる動きが広がっています。地元の人たちと新しく移住してきた人たちをつなぎ、トランジションタウンいすみの活動として、地域通貨「米」やいすみローカル起業フォーラムの毎月開催など、活発に活動が続けられています。
人が幸せになる経済活動とは
>>>アズワン鈴鹿コミュニティの話し合いをベースにした経済活動を見学して
地域の使われていない農地を借りて、ぷりぷりの新玉ねぎがとれています。、地元のスーパーから鈴鹿市民の家庭へ。
同時にコミュニティの弁当屋さんの材料として活用も。おふくろさん弁当にて。地域でとれた米や野菜が総菜や弁当として、地域の家庭に届きます。
参加者のみんなと同世代のレオ君たちから話を聞きました。いろいろ失敗もありながらも、それも糧として、毎日取り組んでいる姿が印象に残ったようです。
最後に、コミュニティ・スペースJoyを見学し、150人のコミュニティメンバーが、お金を介在させない、贈り合いの経済を日々行っている様子に触れました。
環境
鈴鹿の里山での活動や、アズワンの農場-弁当屋さんー食卓までのフードロスが出ないコミュニティの暮らしに触れました。
まだ食べられるのに捨てられる食べ物をフードロスといいます。日本の年間の食品廃棄物2550万トンのうち、646万トンがまだ食べられる状態ですが、その半分は家庭から廃棄されています。ごみとして廃棄された食料は、運搬や焼却で、温室効果ガスを発生させますが、世界の温室効果ガスの10%がフードロスに関連しているとUNE’Pでは報告されています。さらに日本は、食料の半分以上を輸入しているために、その輸送や冷蔵のためにもエネルギーを使います。
家庭から、そして一つ一つのコミュニティから、人と人が協力することでフードロスが出ない暮らしのシステムを創ることができます。
総合デザイン どう実現していくか
コミュニティづくりの経験に学ぶ
総合デザイン
どんな社会に生きてきたいか、どんな自分になってきたいのか
4泊5日を一緒に暮らしながら学んでみて、自分自身は、実際どうしてきたいだろうか。静かに自分に問いかけながら、最後に一緒に学んだ仲間たちの前で発表し、聴き合う時間を持ちました。
感想レポートはこちらから
桃北真有佳さんの詩を、カリンバの音色で合唱した、別れ際のひととき。